diary

diary:2014/5/14we

僕は元福島県人です。
今現在、住民票は東京都中野区です。
本籍は福島県郡山市ですが、住民票に記載されている町名は
古い呼び名のままで、今は別の町名になっており、本籍地は
地図にも載っていません。

福島に住んでいた時間より、もう東京での生活が長くなって
だいぶ経ちますので、現在の福島の現状をつぶさに知ってる
訳ではありません。

それでも福島には両親、妹夫婦、甥姪、叔父叔母らが今も
おりますから、福島に縁の無い方よりはその土地で暮らす
人たちの生の声を聞く機会はだいぶ多いと思います。

郡山と福島第一原発との距離は直線でおよそ60キロです。
その距離が遠いと感じるか近いと感じるかは人それぞれだと
は思いますが、僕の感覚からすると近いとは感じません。
むしろだいぶ遠い場所、という印象です。
今でこそ高速やバイパスができたので時間的には近くなった
ようですが、昔は中通りから浜通りに行くには阿武隈山地を
越え文字通り半日かけて「一山越える」というちょっとした
旅であったので、「海は遠い所」という幼い頃のイメージが
いまだ僕にはあります。

震災後、郡山にはホットスポットと呼ばれる個所が点在し、
駅、学校、公園などそこここにモニタリングポストが立つ
ことになります。一時期は甥っ子姪っ子たちも首から線量計
をぶら下げて学校に通っていました。

放射能は道を通ってくるわけではありません。
風まかせですから60キロだろうが100キロだろうが関係あり
ません。
風が止み雨が降ればそこがホットスポットになるわけです。
それでも郡山は安全だとされ帰還困難区域(大熊、富岡、
双葉、浪江など)の約9200人の方が市内の仮設住宅で現在も
生活されています。

昨年南相馬に行く機会がありました。
町は何も無かったことの様に人が行き交い、子供たちは元気に
遊んでいました。
けれどそこから車でしばらく行った海沿いの地域は、
あの日から時が止まり未だに手つかずのままでした。
福島第一原発から15キロ程、
帰還困難区域からは数キロの場所です。

線量は思った程高くは無いとのことでしたが、僕が感じたのは
線量の高さ云々よりもその近さでした。
近すぎると思いました。

福島第一原発で今何が起こっているのか、
海にはどれだけの汚染水が流れたのか、
廃炉に向けていったいなにをどうしようとしているのか、
それら正確な情報を知る者がここにどれだけいるのか、

もはや郡山ですら遠いとは言えない今、この地に住み、
暮らす人たちのリスクは計り知れないと感じました。

それでも尚そこに住み続ける理由はなんなのか、
なぜそこでなければならないのか、

「故郷だから」

そこに住む多くの人はそう答えるでしょう。
その答えに僕は言い知れぬ無力感を覚えます。
僕は元福島県人です。
もう福島の人間ではありませんが、人に「故郷は?」と
聞かれたら「福島です」と答えます。
故郷というのは生まれ育った場所です。そして、そこで
過ごした時間の記憶があればそれを懐かしいと感じます。
いわゆるノスタルジーです。

子供はノスタルジーにふけることはありません。
過去の記憶が少ないからです。
故郷を懐かしむのは大人です。

僕は最近考えます。
大人の身勝手なノスタルジーに子供を巻き込んでいいのだろうか。
あの日を忘れないでと言いながら忘れさせようとはしていないか。

大人が大丈夫だと言えば子供は安心し、
安全だと言えばそれを信じます。
子は親に従うしかありません。
幼い子にとって選択肢など無いのです。

子供達のためと言いながら自分の居場所を守ろうとする大人達。
復興という御旗の元では全てが善となり正義となります。

これに抵抗するのは非常に困難です。
自分たちは正しいことをしていると信じて疑わない人たちには
何を言っても無駄です。

数年後、燃料棒を取り出しているすぐそばの海で子供が泳いで
いても誰も何も言わなくなるでしょう。
大人たちは昔と同じ風景が戻って来たことに喜び涙するでしょう。
復興の苦労は語り継がれ子供達はそれを誇りに思うことでしょう。
そして危険に対する感覚は日々麻痺し鈍化してゆくでしょう。

福島は北海道、岩手に次ぐ面積を持つ県です。
浜から西に60キロ行っても100キロ行っても同じ福島です。
海は無いけれど中通りも会津も同じ福島です。

少しでも遠く。

全てを台無しにした大人たちが言えることなんて
もうそれぐらいしか残っていないと僕は思います。
故郷を捨てたとか逃げたとか言う輩は論外ですが、
物心ついた子供たちには本当のことをあるがまま伝え、
選択肢を与えるようにするべきだと考えます。
立ち向かわなくていいです。
お願いだから逃げ切ってくれと思います。

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