diary:2014/6/10tu

最寄りの某駅は改札が二階にあり、地上階には階段かエレベ
ーターで降りる仕組みになっている。
僕は基本階段を使う。
エレベーターを待つ間に階段なら下に着いてしまうからだ。

いつもは階段派の僕だが、その日はたまたまエレベーターの
扉が開いていて、すっと吸い込まれるようにエレベーターに
乗り込んだ。
中には女性が乗っていた。
そのエレベーターは両扉式で、女性は背を向けて僕の前に立
っていた。ほんの数秒でエレベーターは地上に降り立ち、
扉が開いたその時。

「うわっ!やってもうた…」

女性が叫んだ。
僕はその唐突な関西弁に一瞬ギクリとしたがすぐにその意味
を察した。
扉の向こうは雨だった。
彼女は傘を電車に忘れて来たのだ。
エレベーターから出るに出られず呆然と立ち尽くす彼女の横を
すり抜け僕はビニール傘を開きそっと振り返った。
扉が閉まる瞬間やはり反対側を向いた背中がちらりと見えた。
エレベーターは今来た道を静かに昇って行った。

(やってもうた…)

こんな時の泣き笑い的な関西弁て完璧だなと思った。
枝雀師匠の落語みたいだ。
傘、見つかるといいすね。 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください